DIABETES

糖尿病内科

糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が高くなる病気です。ブドウ糖は、エネルギー源として、私たちの生命活動を維持するために最も大切な栄養素ですが、これが何らかの理由で必要以上に増えてしまうのが糖尿病です。のどが渇く、急に痩せた、だるい、疲れやすい、尿が匂う。このような症状は、糖尿病の初期症状かもしれません。採血検査を受けましょう。
一方で、糖尿病はサイレントキラーとも呼ばれ、明らかな症状がないうちに進行し、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などの重篤な疾患を引き起こします。お一人お一人に合ったお食事、運動、薬物療法を、私たちと一緒に取り組んでいきましょう。

糖尿病とは?

食事からとった糖質は、体の中でグルコースに分解されて、いろいろな臓器のエネルギー源として利用されています。血液中のグルコースを血糖、と呼びます。糖尿病とは、グルコースをうまくエネルギーとして利用できずに、血液中にグルコースが余ってしまって血糖が高くなる病気です。では、なぜ糖尿病ではグルコースが利用できないのでしょうか。グルコースを細胞が取り込んでエネルギーとして利用するためにはインスリンという膵臓から分泌されるホルモンの働きが必要です。糖尿病の患者さんは、このインスリンの分泌が低下したり、あるいはインスリンの働きが悪くなってしまったりしているのです。 糖尿病は、病態としては、膵臓のβ細胞が壊されてインスリンが分泌されないタイプの糖尿病(1型糖尿病)、インスリンの分泌が低下したりインスリンは出ているけれども働きが悪くなってしまったりして起きる糖尿病(2型糖尿病)とに分けられます。
そのほか、肝臓や膵臓の病気に付随した糖尿病や、妊娠中にのみ血糖の上昇する妊娠糖尿病などもあります。

1型糖尿病

1型糖尿病は、自己免疫疾患の一種と考えられています。
体の中のリンパ球が、自分自身の膵臓β細胞を壊してしまうために、インスリンが分泌されず、結果として血糖が高くなって起きる糖尿病です。全糖尿病の5%以下で、発症は比較的少なく、年間で小児の10万人に2,3人が罹患します。原因は、ウイルス感染症を契機とする場合もありますが、特にはっきりとした原因のない場合も多くみられます。一般に、若年(小児期)を中心に発症がみられますが中高年でも発症することがあり、遺伝性や先天性の病気ではありません。
1型糖尿病には、中高年に比較的よくみられる、緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)という病態もあります。ゆっくりと進行し一見2型糖尿病のように見えることもあり、自己抗体の測定などを行わずに治療していると2型糖尿病と間違って治療を続けていることもあります。当院では初診の糖尿病疑いの患者様には、抗体検査を必ず行っています。現在治療中で、最近急にお薬が効かなくなってきたというような場合は、一度疑って抗体検査を受けた方がよいでしょう。また、劇症1型糖尿病という病態もあります。急速に進行し、意識消失などの重篤な症状を来すこともある病態です。
1型糖尿病では、自分のインスリンが作られなくなっていますので基本的にはインスリンを注射するという治療になります。お子さんの時に発症すると、生涯にわたってインスリンの自己注射を続けなければならず大変な病気です。最近出てきたSGLT2という内服薬は日本では唯一1型糖尿病に適応の通っている飲み薬です。インスリンと組み合わせて内服することでインスリンの注射量を減らすことが出来、低血糖のリスクなども減らすことが出来るメリットがあります。またSPIDDMの患者さんでは、血糖のコントロールが良好であればSGLT2のみで治療している方もいらっしゃいます。
1型糖尿病は、このように原則インスリンの注射を必須とする、生活習慣と発症とは関係のない病気ではありますが、治療にはお食事療法や運動療法も、2型糖尿病と同じぐらい大変大切です。お食事、運動をきちんと医師の指示通りに行った場合とそうでない場合では、インスリンの量や効果、Hba1cの数値などが大きく異なり、合併症のリスクもぐっと変わってきます。

2型糖尿病

2型糖尿病は糖尿病の90%以上を占め、私たちが糖尿病といった時にはだいたいこの病態を指しています。生活習慣病という言葉が広く使われますが、実際には遺伝的な体質に、加齢、生活習慣が重なって発症することが多く、同じものを食べていても血糖が上がりやすい人、上がりにくい人がいます。糖尿病の家族歴がある方は、より一層注意しないと血糖が上がってしまい、その状態が続くと糖尿病を発症するリスクがあります。現在日本人の1000万人が糖尿病を強く疑われる状態にあり、さらに1000万人が糖尿病予備軍と考えられています。まさに、国民病とも呼べる状態ではないでしょうか。
健康診断で要注意が付いた方は、注意だから大丈夫と思わず、必ず医療機関を受診しましょう。当院では、お食事・運動療法で良好な患者様でも、きめ細かく採血検査をフォローすることで、健康長寿を全うしていただく取り組みをしています。お薬飲むほどじゃないから大丈夫と思わずにぜひご相談ください。

症状

糖尿病はサイレントキラーとも呼ばれ、自覚症状がなく進行することの多い病気です。ほとんどの患者さんは初期の糖尿病では症状がなく、健康診断で異常を指摘されて来院されることが多いかと思います。 一方で、急速に発症した糖尿病の場合は、血液中の糖分をエネルギーとして利用できない、血液中の糖分が急激に増え浸透圧が高まる、などの原因によりいろいろな症状が出ることがあります。疲れやすい、痩せる、のどが渇く、などの症状が出たときは糖尿病の可能性がありますので、一度ご相談ください。重症の場合には意識障害を来したりすることもあります。血糖値は採血検査を受けないと分かりませんので、体調がおかしかったら一度検査を受けてみましょう。

糖尿病はなぜ怖い?糖尿病合併症について

糖尿病は、明らかな症状がなく進行し、全身の血管をむしばんで動脈硬化を起こし、最終的には心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(足の血管が動脈硬化でつまる病気)などの重篤な合併症を引き起こしてしまいます。これが、糖尿病がサイレントキラー(静かなる殺し屋)と呼ばれる所以です。糖尿病の合併症は、大きく分けて大血管疾患と細小血管障害がありますが、いずれも血管、つまり動脈硬化の病気です。『人は血管から老いる』という言葉もありますが、血管の病気は全身の病気に繋がっているといえます。

大血管疾患は、先ほど述べた心筋梗塞、脳梗塞、などがこれにあたります。いずれも、動脈硬化で血管が詰まってしまって、様々な臓器に血液が流れず壊死を起こしてしまう病気です。足の血管が詰まる閉塞性動脈硬化症も糖尿病の患者さんに多く見られます。進行すると下肢の切断などをする必要もあるこちらも大変怖い病気です。
細小血管障害と言われるものには、糖尿病神経障害、網膜症、腎症などがあげられます。糖尿病により失明したり、透析療法が必要になったりする患者さんも多くみられます。また、足のしびれも糖尿病の合併症によるもので、両足がびりびり・じんじんとしびれる症状が出ます。そのほか、感染症にかかりやすくなる、歯周病になりやすくなるなどの合併症も多くみられます。骨粗しょう症も糖尿病で増える疾患の1つです。このように、糖尿病が原因で、様々な病気のリスクが非常に増えてしまいます。健康で充実した生活のために、きちんとした治療が非常に大切です。

糖尿病の治療

糖尿病の治療の三本柱は、食事療法・運動療法・薬物療法です。お薬を飲んでいらっしゃる患者さんでも、食事や運動をきちんと気を付けていただくことで、より良好なコントロールが得られたり、合併症の予防に有効であることが分かっており、一番大切なのはお食事と運動です。

食事療法

食事療法は、カロリーを制限するというだけのことではなくバランスよくきちんと栄養を取ることが大切です。極端なダイエットは治療にはなりません。
カロリーはその方の理想体重に日常労働によるエネルギー消費を計算して求められるもので、お一人お一人で必要なカロリーは異なります。たとえば、身長170㎝の方で、肉体労働をされている場合の理想的な1日の必要カロリーはおよそ2200kcalですが、身長150㎝でデスクワークをされている方の場合はおよそ1400kcalと大きく異なります。ご自分に合ったお食事療法は、医師や栄養士と共に一緒に相談して決めることが大切です。そして、その食生活を毎日続けていくことが、最も難しく、しかし大切な部分になります。
糖質も完全にゼロにするのはかえって腎機能低下のリスクがあると言われており、全体のカロリーの40%から50%を炭水化物で摂取することが推奨されます。ただ、果物やお菓子などは極力控えめにした方がよいでしょう。それでも、毎日ずっと我慢しているとかえってストレスが溜まってしまいますので、お昼にデザートを食べたから夜は我慢しようかなとか、今日は夜外食をするので朝と昼は控えめにしようかななど、メリハリをつけて楽しみながら治療を続けられる方法を工夫しましょう。アルコールは控えめに、1日缶ビール1缶ぐらいを目安にしましょう。

運動療法

運動は比較的若い方では、1日60分、散歩や水泳、軽いジョギングなどの有酸素運動が勧められます。ご高齢の方の場合は1日30分、息が切れるような激しい運動よりも、軽く汗をかく程度の苦しいと感じない運動をお勧めしています。毎日行うことが大切ですが、少なくとも週に3回は運動するようにしましょう。運動を続けることは大変難しいですし、目的無く散歩をすることも大変かと思います。通勤されている方ではなるべく階段を使う、近い距離ならバスや電車に乗らずに歩くなど、無理なく続けられる方法を工夫されるのが良いでしょう。また、自宅の中での家事も、軽い運動になります。お洗濯やお掃除、炊事なども、体に良い運動だと思ってやっていただくと楽しくなってくるかもしれません。ただし、運動療法は、患者さんの病状によっては、制限がある場合もありますので、主治医とよくご相談ください。特に、糖尿病のコントロールが悪い場合、心疾患などの合併症がある場合、網膜症が進行されている場合は運動が病状を悪化させるケースもあります。

薬物療法

お食事、運動の治療でも、なかなか血糖が下がらない場合には、お薬を飲んで治療を行います。患者さんの中には、お薬の内服に抵抗のある方もいらっしゃいますが、極端に糖質をゼロにしたり、体重を極度に落としたりして血糖値を正常化させようとする治療はかえって健康を害してしまいます。お食事・運動だけで血糖が下がらないのはそういう体質であるので、薬を飲むことでバランスよく栄養が摂取できるようになり、結果として健康長寿につながるのです。また、糖尿病は実は進行性の病気です。最初に診断されてから、次第にインスリンの分泌が低下したりインスリンの働きが悪くなったりして、同じように生活されていても血糖のコントロールが悪くなってしまうことが多々あります。そのような場合にも、薬物療法を上手に積極的に取り入れて、健康長寿を全うしましょう。
糖尿病のお薬にはいろいろな種類があり、ご病状や生活リズムに合わせて処方されます。決められた時間、容量を守って内服しましょう。最近は、SGLT2といって、尿に糖を排出するお薬で、腎臓や心臓にも良い効果が期待されている薬もあります。また、インスリンにGLP1というお薬を組み合わせて、低血糖を起こしにくく1日1回の注射で良好な血糖コントロールが得られるお薬や、肥満にも効果の期待できる新しいGLP1の内服薬など、様々な新薬も開発されています。
今飲んでいる薬が自分に合っているか不安だというようなご相談もお受けしています。お気軽にご相談ください。